製品技術コラム

2026.05.13
  • 縫製機器

工業用アイロンの変遷 1 

工業用アイロンは、時代とともにその仕組みや素材を大きく変化させてきました。
戦後の洋服の普及や新素材の登場により、求められる性能も大きく変わってきています。

本記事では、工業用(業務用)アイロンの種類や素材の変遷、そしてヒートレスアイロンの開発に至るまでの流れを解説します。

電気アイロンの歴史

アイロンは、その名「鉄」が由来するとおり、19世紀中頃、イギリスで取手をつけた鉄の厚板に石炭のおき火をのせて、衣服のシワを伸ばしたのが始まりと言われています。 これよりも以前、16世紀に当時流行したラフ(ひだ襟)を形作るための鏝(こて)が使われていました。 

日本では、古くから金属製の火桶の中に石炭を入れ、その火桶に木製の柄がついた「火熨斗(ひのし)」が使用されていました。
 江戸中期頃からは「笹鏝(ささごて)」または「焼き鏝」といった火鉢の中に鏝を入れ、高温になったところで布地にあてる方法が用いられるようになりました。

火熨斗(ひのし)


 19世紀末頃から洋服の普及に伴い、イギリスから「西洋火熨斗(アイロン)」が導入されます。 最初に導入されたアイロンは、炭火をアイロンの釜の中に入れ、釜の下が鏝になり、布地に当てて使う形状や、焼き鏝のように炭火で暖めてから使う形状が主流でした。 

西洋火熨斗(アイロン)


次にガスの普及により、内部にガスバーナーの装置をつけ、ガスを燃やしてアイロンを暖めるという「ガスアイロン」が登場しました。 しかし、これはアイロン本体に硬いガスホースが付属していることや火の加減が難しく、扱いにくい形状だったため、あまり広く普及しませんでした。

大正末期から昭和の頃、ニクロム線の発達によって「電気アイロン」が登場します。
 最初の電気アイロンは、アイロンの形をした鋳物の中に瀬戸物を入れ、ニクロム線を転がすという簡単な物でしたが、すぐに瀬戸物が割れニクロム線が切れるという欠点がありました。
次に、鉄の棒に絶縁体を巻き付け、周囲にニクロム線を巻き付ける方法が開発されました。これは前者よりは切れにくいが、当時電熱器の情報が少なかったため、ニクロム線の加工技術が悪く、海外のアイロンと比べると切れやすく寿命が短くなってしまいました。 
その後、ニクロム線の技術が発達し、海外のアイロンと同等の品質をもつ製品が開発されるようになりました。 

この頃のアイロンは、温度調節がなくヒーターをスイッチの「オン」「オフ」で調整して温度コントロールをするタイプが主流でした。(当社 Eシリーズ) このタイプは、温度コントロールは大変難しいのですが、アイロン底部を非常に高温にすることができるため、木綿のシャツなどの仕上げのため、クリーニング業界で使用されていいました。

オンオフのみの温度調整


その後、温度調節が簡単にできるように、サーモスタットが使用されるようになります。 サーモスタットは、バイメタル式サーモスタットから始まり、リキッドセンサー式サーモスタットなど、より精密な温度管理ができるように改良されてきました。

現在では電子式サーモスタットを使用し設定温度の誤差が±2度まで精密にできるようになっています。(当社 DTシリーズ)